地方都市から日本を見る②:ランドマークに見る地方の現在

これは、地方都市を歩き続けてきた個人的な備忘録です。

私はこの数年は、一年のうちに数回ほどは地方都市に滞在する生活をしています。この4年で公私併せて31都道府県に宿泊してきました。地方都市では滞在の合間になるべく時間を作って中心市街地を歩きまわるようにし、日本の現在を見ておこうとトライしてきました。

このコラムでは少子高齢化・人口減少下の現在の日本での、私が気づいた地方都市の現在をあくまでも主観的に記しておきます。目的は誰かのための教訓というより、自分のための備忘録なので、こういう見方もあるのだと気楽に読み飛ばしていただければ幸いです。

アプリ”経県値”で2022年以降に行った都道府県を整理

1、都市の賑わいを考える

私は都市の賑わいという感覚を重視します。これは数値ではなく大変主観的な見方で恐縮ですが、ただ都市の賑わいというと多くの人が重視する感覚ではないかと思います。
あえて分解するならば、賑わいとは

  • 人の多さ(中心街の人手と密度)
  • 人の多様さ(観光客だけではなく地元の勤め人や学生など多様な人がいる場所は都市の持続性と将来性を強く感じます)
  • 店の多様さ(地元向けと観光客向け、日常向けと買い周り品、など。またブランドショップや高級品店の充実度など)
  • 繁華街の面的な広がり(メインの通りだけではなく周辺にどのぐらい賑わいが波及しているか)

の合計で、主観的に見ている感覚となります。

ただ、多様な人の多さ+範囲の広さが街の賑わいのポテンシャルというのは、多くの都市観察をする方、街歩きをする方にとってはご同意いただける方も多いのではないでしょうか。

2、特に特徴が現れるのは中核市

人口減少といっても、主要な政令指定都市であれば、大きく人口が変動していないところも多く、特に札仙広福については地方の中核としてかえって周辺人口が集中し人口が伸びている面もあります。中心市街地の人出も昔と変わりなく、賑わいも東阪の有名繁華街並みの賑わいがあると言えます。

札幌市の風景

都市に応じて賑わいや繁栄度に大きく差が見えてくるのが、これらより下位の政令指定都市から中核市だと思います。

これらには、政令指定都市でありながら賑わいや人通りが規模に見合わないほど落ち着いた都市(例:浜松、新潟、北九州)、中核市でありながらこれらを上回る賑わいとみせる都市(例:鹿児島、松山)などが見られました。

これは、人口減の影響が大きく出ている都市クラスタであること、またそれにサバイブした都市にあっては、政令指定都市以上に都市の特徴が出ているためと考えます。

3、中心市街地の特徴

各種ニュースに接していると、大都会の人間は、地方都市では車社会で鉄道の重要性が低く、また購買の場がロードサイドに移行して中心市街地がシャッター通りになって衰退しているというイメージを抱きがちかと思います。

しかし少なくとも県庁所在地、中核市レベルにあってはシャッター街レベルにまで衰退しているところはあまり無く、多くの都市では活気のある中心市街地が見られます。これは、官公庁・全国企業の支社・学習塾などが集約される一角があることで集客力があることが原因でしょう。

コンパクトシティの成功例としてよく取り上げられる富山市総曲輪の
グランドプラザ(著者撮影)

また日用的な商店が減って商店街が一時的に衰退しても、そこに新興の商店が入ることで新陳代謝が行われていると感じられます。とはいえ、多くの場合、衰退した商店街に取って代わるのは居酒屋や水商売系の店であり、必ずしも地域の住民全てに向いたことではないことで、このことを衰退に感じる人がいるのはしょうがない面もあると思います。

飲食店や居酒屋が多い高崎市中央ぎんざ通り(著者撮影)

4、都市規模に応じた特徴的なランドマーク

ここからはいくつかのランドマークを通じて、都市の現状を考えてみたいと思います。

最初は特に都市に影響の大きい3つのインフラです。

JR駅が市街の中心に

従来の地方都市は中心市街地と、新幹線あるいはJRの中心駅が離れており、前者に賑わいが集中しているのが通常でしたが、最近は殆どの都市でJR駅の再開発が進み、第二の都市極になっているか、あるいは旧来の中心市街地を凌駕する賑わいをみせています。

これは政令指定都市である札幌(すすきのに対するJR北海道タワー周辺)、福岡(天神に対するJR博多駅周辺)などで顕著なこと、さらに新潟などでは旧来の中心市街地である古町に対して駅近くの万代のほうが賑わいを見せています。

中核市にあっても鹿児島、旭川、長崎、富山、などでこの現象は共通ですね。

博多駅周辺(著者撮影)
鹿児島中央駅周辺(著者撮影)

もっとも高松、松山、金沢、熊本などのように、駅前の再開発が限定的で、依然都市として中心市街地の方に強い引力がある都市もあります。

JR駅から遠いが金沢第一の繁華街の片町(著者撮影)

これら総じてJRが駅近くの遊休地を用いて、商業+居住の大規模開発を進め、最新のテナントとあたらしい不動産で高い吸引力を発揮するからなのでしょう。面白いのはたとえば宇都宮のように必ずしも鉄道需要が高くない都市でも同じ現象が起きていることです。つまりJRの強さは電鉄会社ではなく土地持ちの大規模デベロッパーということになります。

タワーマンション

近年の地方都市の特徴は、20〜30万人程度の中核市でも中心市街地に高層タワマンが建ち、数千万円以上の高値で売り出してもすぐに売れることでしょう。

その一つの象徴的な物件が2025年に旭川に開業した25階立てのプレミスト旭川ザ・タワーでしょう。これは3年前に行った時の写真でまだ建設中ですが、最上階の部屋は3億5千万円と北海道では破格の値付けにもかかわらず、すぐに完売したようです。

出典:https://www.moneypost.jp/1041408

プレミスト旭川建設現場
(2023年著者撮影)
プレミスト旭川のポスター
(2023年著者撮影)

また同じ北海道では、10万都市の北見でも14階立てのタワマンが出来たようです。北見市では実に20年ぶりのマンションとされています。特に北海道では中心市街地への人口の集約が加速していると感じますね。
出典:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1250568/

同様に、2024年12月に長崎に行った際は、街中にタワマンが建設中で、都市規模に見合わない開発度合いに驚きました。長崎は40万都市ですが人口減が著しい都市でもありますが、坂が多く中心市街地の浜町〜思案橋付近にかけて平地が少ないこともあり、タワマンを建てても売れるほど都市の魅力は健在なのだと感じます。

長崎市のタワーマンション建設現場(2024年著者撮影))

人口減都市にあっては一様に人口が減るのではなく、中心市街地への人口集中が起こることがあり、特に郊外の富裕層が多い場合に、これがタワマン需要を生むのだと考えます。政令指定都市まで含むと、新潟や札幌などは、JRの駅でも従来裏口とされた側に大規模なタワマンが何棟も立ち並び旺盛な人口集中を感じられますね。

アーケード街

平成時代からアーケード街の衰退と再生について多くの人が関わり、さまざまな言説が語られてきました。私が見た限りでは、現在大きく4つの方向性があると思いました。

  • 中心市街地の賑わいの中心として健在(熊本、松山など)
  • 再開発がうまく行った。あるいはリブランディングや町おこしがうまくいき再び勢いを増している(高松、盛岡など)
  • 行政主導で税金が投入されアートフェスや若手起業家の誘致などの再開発が行われているが空回りしており買い物客が少ない(岐阜、黒崎など)
  • アーケード街がもはや機能しておらず照明もなく、役割を終えようとしている(徳島、和歌山、尼崎の一部など)
岐阜市柳ヶ瀬(2023年著者撮影)
徳島市(2024年著者撮影)

私は町おこしの専門家ではないのでこれらに対する詳細な論評は避けます。ただし、必ずしも行政が提唱するコンパクトシティなどの標語にとらわれず、その都市の中でアーケードが誇りなのか負債なのかの立ち位置を知っておくことは、都市の理解には不可欠だと思います。

5、現代の都市に現れる三つの事象

ここからは、さらに個別性が高いですが、都市に応じた個性が際立つ3つの事象を見ていきます。

野村證券

私は都市の伝統的な中心地に必ずあるのが野村證券の支店だと感じています。これは証券会社の中でもっとも伝統的で扱いの大きい顧客が多い証券会社であり、またこの支店が存在する場所は、他に信託銀行や対面証券、高級時計店など、裕福な顧客を相手にする店舗が集中し、都市の中でもっとも消費の格式が高い場所だと考えられるからです。

一般には、駅近くオフィス街の大通りに面した大型ビルの1Fやアーケード街でも繁華すぎない一角に店舗を構えていることが多いですね。この一角を見つけることが経済重心として重要なのだと考えています。

スタバ・ドトール・コメダ

かつてのスターバックスコーヒーは地方都市では憧れの存在で、鳥取県に最後にスタバができた時には大きいニュースになりました。しかし現在では、直感的に最も多く地方で見かけるコーヒーチェーンはスタバであり、つづいてコメダだと感じます。

スタバは一等地の商業ビルには必ず入っていて地元の若者の集まる場所になっている他、郊外型店舗がロードサイドにあることも多いですね。コメダはロードサイドが中心ですが、多くの地方で見られ、地元の人の憩いの場になっているのを見かけます。

旭川の公園内のスターバックスコーヒー(著者撮影)

両ブランドが、スタバは都会的な洗練を地方に持ち込む意味で、コメダは旧来の喫茶店に代わる日常の場として、地方都市にもブランディングを浸透させ溶け込んでいるのを感じます。

逆に首都圏では各駅にあるぐらいよくみかけるドトールコーヒーは、地方都市で見かけることは稀と感じます。中核市でも市街地の中心部に1〜2箇所しかないということも多く、逆にドトールコーヒーがあることこそが都市の証という、逆説的な印象を持ちます。

ブランド戦略として地方都市ではなく、大都市での密接な出店を重視しているのが見てとれます。他チェーンより単価が安く回転数重視なので、人口が多い地区を優先しているのかもしれません。

店舗数から見ると2025年9月時点では以下のようになり、少なくとも店舗数ではスタバの一人勝ちという状況のようですね。

  • スターバックス:2,077店舗
  • ドトールコーヒーショップ:1,078店舗
  • コメダ珈琲店:1,055店舗

(出典:https://www.fc-hikaku.net/dokuritsu_kaigyo/3127

eスポーツ

この数年、多くの都市で行政主導のもとeスポーツ関連の施設が増えていると感じます。旭川、徳島などでは市街地の中心に行政によるeスポーツの学校があり、町おこしの一環としてのeスポーツへの期待の高さが感じられました。施設内にはゲーミングPCとゲーミングチェアが並び、日常的なスクールの他、定期的にeスポーツのイベントが行われているようです。

もっとも外から見る限り閑散としていることが多く、かならずしも地方の問題に寄り添った施設ではないという印象も受けました。Eスポーツを前面に押し出す地方都市出身者の今後の活躍が待たれるところだと思います。

徳島のe-Sports施設(著者撮影)

おわりに:地方都市のランドマークから見えてきたこと

ここまで幾つかの事象から見てきました。これらや、それ以外にも目につく現象のグラデーションがあり、各都市の現在の立ち位置を個性豊かなものにしていると感じます。

またこれらのようなランドマークに注目してみることで、地方都市を人口だけでひとくくりにせず、各都市の立ち位置が明確になってくると感じます。

次回コラムは、都市内でも特に高額な消費がされる、デパートならびに高級ブランドショップの現状から、地方都市の現状を別の角度で見てみたいと思います。

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