地方都市から日本を見る③:デパート、ハイブランド、ドンキホーテ

このコラムでは前回コラムに続き、私がここ数年で見てきた地方都市の現状を、特に高額消費がなされるデパートと高級ブランドショップの観察を通じて、あくまでも私の主観として語りたいと思います。前回同様、気楽に読み流していただけると幸いです。

1、デパートから見る

地方都市のデパートにみる特徴

デパートの撤退が相次いでいます。近年では帯広、松江、岐阜などでデパートの撤退が話題になりました。逆に、富裕層やインバウンド消費が見込まれる都市ではデパートも活況をしめしており、2024年には上場百貨店の上位10社中7社が増収・営業増益※だったとされます。

出典:https://diamond-rm.net/market/accounting/515759/

※もっとも日中関係の悪化に伴い2025年の業績は下降の見込みのようです。

デパートはもはや全国津々浦々に存在する全国民向けのインフラと言うより、限られた富裕層とインバウンドを相手にする業態に転換中と言えるのかもしれません。

ただし中核市クラスでは百貨店は撤退しても、跡地がショッピングセンターになり、多くのテナントが入っているケースは多く見かけます。

ショッピングセンター形態で運営コストを抑え、ぎりぎりのところで生活インフラとして踏ん張っているのが多くの地方のデパートの現状ではないでしょうか。

デパートとドンキホーテ

近年、デパートやショッピングセンターの所在地が必ずしも繁華街の中心ではなくなり、むしろ繁華街の外れになってしまい、別の場所が賑わいの中心になっている都市が多くみられます。これは盛岡、佐世保などで感じました。その場合、多くの都市でもっとも多くの人が集まる場所にあるのが、ドンキホーテです。

また百貨店が賑わいの中心に存在する場合でももう一つの核がドンキホーテと感じられる都市も多いです。

かつての日本ではデパートこそ街のハレ消費の中心で、休日には家族でデパートに行き日用品から高級品まで買うのがステータスでしたが、多くのデパートがその座を降りた現在、特に日用品を買いに行く楽しさはドンキホーテこそが担っていると感じます。全国どこでもアクセスでき、あれだけの品揃えの店舗は他にないですからね。

ドンキホーテの出店戦略もまた、都市型店舗においては市街地のもっとも人が集まる一等地を狙っているのがよくわかります。ただの多品種安売り店を超えて、今地方都市ファミリーのマインドに大きい位置を占めるのがドンキなのではないでしょうか。

廃デパートの活用

近年、特に中心市街地の衰退が著しい都市において、業務を維持できずデパートが撤退したあとのビルが、行政機関が主導し全部入りのビルとして生まれ変わることがあります。

典型的なパターンだと1〜2Fに大型スーパー、3F〜5Fに行政の出張所やテナント、上階はハローワーク、献血ルーム、会議室、コワーキングスペースという、行政と民間混合のビルディングです。

この形式のビルは全国の非常に多くの地域で見られ、私も実際に徳島、木更津、高岡、土浦、呉などで見てきました。

2023年に甲府の岡島百貨店跡にできたココリなどは成功例として上がっていますね。

逆に津山のアルネ津山では失敗とされ、明暗があるようです。

これは行政のコンパクトシティと中心市街地の維持と言う課題と、商業施設の維持という課題を短期的に解決させる一挙両得の方法なのでしょう。

大きい予算があれば、たとえば富山で美術館・図書館・銀行などが入ったTOYAMAキラリのように、行政+民間で使い勝手と美観を両立し、隈研吾氏のような有名建築家に依頼した全面建て替えもできるでしょう。

富山キラリ(2024/11筆者撮影)

しかし人口減の中で限られた予算の中では、多少使い勝手に不自由があっても、生活インフラとして最善手として活用されているのだと思います。

2、ブランドショップから見る

ブランドショップにみる人口規模

さて、実際にデパートが今でも残り、富裕層人口が多い都市であっても、それぞれに特徴が出てきます。ここでは都市ごとの特徴が出るランドマークとして、海外ハイブランドのショップをメルクマールにみてみたいと思います。

これは私が地方都市に行くたびに感じる特徴であり、ブランドショップの分布こそがその地方の経済状況を反映し、人口+賑わいで大きく異なる特徴が出るからです。

以下5段階での代表的なブランドを挙げていきます。

Tier1:コーチ、ポロ、エンポリオアルマーニなど

これはほぼどこの主要都市にも存在します。田舎と都市を判別するメルクマールとも言えるブランドだと思います。

地方の買い周り圏の経済規模で支店が成り立つブランドなのでしょう。

写真はイメージです。

Tier2:グッチ

これは人口規模で30万人に敷居があると感じました。上位の中核市から小規模な政令指定都市であれば、路面店はないものの、デパートにはだいたい入っています。高額とはいえラグジュアリーブランドとしては買いやすく、一地方都市でのハレ需要で十分商圏が成り立つブランドなのでしょう。

写真はイメージです

Tier3:ルイヴィトン

これは現在、30万人規模の都市での存続が苦しくなっており、50万人規模の都市が維持ラインになっていると感じました。水戸(人口25万人)からの昨年での撤退はニュースになりました。日本での第三号店があった高知(人口約30万人)からもすでに撤退済みです。一昨年宇都宮(人口約50万人)で見た時も、ブティックが閑散としており、この辺が人口の閾値だろうと感じさせました。

宇都宮のブランドショップ街(2024/8筆者撮影)

富裕層人口、ならびに夜の世界でのプレゼント需要が30万人都市でもはやは成り立たないのかもしれません。

ただし松山、鹿児島など西日本の50万都市では、デパートの店舗を見る限り来店客も多く軒並み活況と感じられました。これは夜の街が大きいことでのナイトエコノミーの規模と、県民性が関係しているのかもしれません。

松山市の高島屋(2023/9筆者撮影)
鹿児島市の山形屋(2023/7筆者撮影)

Tier4:バレンシアガ・ディオール・シャネルなど

これらのハイブランドの支店が成り立つは100万人から150万人が閾値だと思います。支店があるのは東阪名と札千広福※までで、中核市や下位政令指定都市では存在せず、このぐらいの経済規模では、これらのブランドを欲する年齢層の若い富裕層、ならびに夜の世界を含むプレゼント市場には満たないのだと感じます。

※札仙広福:札幌・広島・仙台・福岡という、3大都市圏に次いで日本の地方の拠点になる4大都市の総称。

札仙広福クラスであれば、地方の代表都市として、他県からの買周りユーザーもいること、ナイトエコノミーの規模がある程度あることでこれらの店舗が成り立つのでしょう。

写真はイメージです

一方、福岡においては2025年開業のワンフクオカで日本最大の3フロアにわたるシャネルブティックが開業して賑わいを見せているように、上位政令指定都市であれば状況に応じては東京以上のポテンシャルを見せることもあります。福岡は特に、インバウンドの高額消費の需要が大きいようですね。また中州のナイトエコノミーの規模から、プレゼント需要も大きいのだと推測します。

福岡市天神。左が日本最大のシャネルブティックが入るワンフクオカ(2025/5筆者撮影)

Tier5:ゴヤール、ベルルッティなど

これらの基本、東京か大阪(もしくは神戸・京都)、あっても名古屋までにしか存在せず、500万人〜1000万人の商圏人口とがないと店舗が成立しないブランドだと感じます。

比較的知名度が低く高額なブランドは、その文脈を読み解く富裕層文化の蓄積が必要であり、都市規模の集積が必要なこと、またブランドのグローバル本社の視点でも、出店する都市にそれなりの格式を求めるからなのでしょう。

写真はイメージです

3、デパートとブランドショップの分布から見えてきたこと

ここまでブランドショップの分布が、人口並びに都市の特性でどう変わるのかを主観的にみてきました。基本は人口で出店の閾値があること、ただしそこに影響を与えるのが、ナイトエコノミーの大きさとプレゼント需要なのだと想定できます。

4、終わりに

以上、私の主観的な視点で見た令和現在の地方都市の中心市街地の現状でした。

多くの都市でデパートが衰退し、それが中心市街地でのドンキホーテにそのハレの日の機能をシフトしており、デパートの建物は行政の拠点に転換中。

またデパートがある都市でも、ことハイブランドにおいては、都市規模と特性で出店状況に差があり、ハードルが高くなっているという状況が進んでいると考えます。

写真はイメージです

これが令和8年時点での日本の中核市を横断してみた状況ではないかと思います。

さて在住者ではなく滞在者なので、詳しい方からは足りない視点も多いと思います。ただ、特に同じように地方にたまに行く都市在住者の方には、少し多めに行っている人間からの視点として、お役に立ててもらえると幸いです。

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