人生のステージを神話から考える

1、人生のステージを考える書籍との出会い

私は会社員をやめて早4年、当社を開業して早3年近くの時間が経ちました。当社はただ金儲けや肩書きのためではなく、私自身の人生の新しいステージの舞台として設立しました。

このコラムでは、私が会社員を退職後に読んで、その後の人生の心構えを得られた素晴らしい本を何冊か紹介していきます。会社の設立意義や今の働き方そのものが直接の影響下にあると言える、そんな重要な本です。

2、キャンベル「神話の力」を読む

ギリシャ神話の中核となる神、ゼウスとヘラ

神話の力とは

一冊目にご紹介するのは「神話の力」(ジョセフ・キャンベル)です。

この本は、アメリカの著名な神話学者のジョセフ・キャンベル氏とジャーナリストのビル・モイヤーズ氏の対談集です。古代の神話がいかに現代人の心理と共通しているか、いかに英雄の物語が現代に影響するのかを古今東西の様々な神話を引用し語り尽くしています。

キャンベル氏の神話学は、かの映画監督ジョージ・ルーカスにも影響を与え、スターウォーズの英雄譚の原型になったことでも有名です。

画像をクリックすると該当ページに移動します。
※画像は Amazon.co.jp 商品ページ(NHK出版『神話の力』)より引用。

神話と現代人の共通点

なぜ神話が現代人の心理と共通しているのでしょうか。

キャンベルによれば神話は人間の無意識構造の表出であり、伝説の形をとった人間精神の葛藤や成長の物語であるそうです。人間の肉体や感情が古代から現代まで同じものである以上、神話が描く人間の成長・葛藤・死の受容などの人生の教訓もまた昔と共通したものであるようです。

それは、時代による技術の進歩や社会形態の変化に関わりなく、現代を含むすべての時代に共通するものとされています。

3、神話で描かれるステージ

神話に見る人生のステージ

本書の中では、世界の神話に共通して人生のステージを構造的に捉える内容があるとされます。この部分印象的な書き方でしたので、少し長いですが引用してみます。

人間の発達の諸段階は、現代でも古代と変わりはありません。

子供のころ、人は規律の世界、服従の世界で育てられ、他人に依存して生きる。

成年に達すると、そのすべてを変え、他人に依存するのではなく、自己に責任を負い、主体性を持って生きなければならない。その関門抜けられないなら、神経症に陥る基本原因ができてしまいます。

そして、自分の世界を確保したのちに、その世界を譲るという段階がやってくる。放棄や離脱の危機です。そして最終的には死。それが究極的な離脱です。

このように、世界の神話には共通する人間精神の、服従・自立・放棄の3段階のステージがあるとされます。

古代社会と現代社会

これは神話が形作られた古代社会では食料の生産性が低く、はみ出しものを養う余地が少なかったため、社会の構成員は発達段階に従って精神を磨く必要があったためでしょう。これができないはみ出しものは、しばしば死をもって排除されたようです。

翻って現代では、社会の生産力が古代とは比較にならないほど増大し、多様な人間を養えるようになりました。社会の強制力がなくなり、神話で定義される成長の必要性を意識することもなくなりました。現在では以下のような人も多いのではないでしょうか。

  • 大人になっても服従的・依存的で、責任ある主体者になれない。
  • 自分の得たものを独り占めし、後進に継承しようとせず、失うことをひたすら恐れる。
  • 老いや死を受容できず、全盛期にしがみつき、納得がいかないまま死に至る。

自分自身に置き換える

私自身が、キャンベルの言葉をみて、前のステージに固執する側面があることに気づき、はっとさせられました。


具体的に言えば、自分の得た自由に過剰に固執し、自分の子供だけでなく、親族・友人・地域など身近なコミュニティに還元することを忘れていたということです。

広いコミュニティへの還元がないと、最終的には社会が閉じ、自分の存在意義をなくしていたでしょう。これを明文化しているのが、のちの開業につながるこの本での気づきでした。

4、インド人の考える四住期、というステージから学ぶ

四住期とは?

同じように人生をステージに分ける考え方がヒンドゥー教にもあります。すなわち、バラモン階層を中心に理想とされたアーシュラマ(四住期)と呼ばれる考え方です。キャンベルの指摘した神話のステージが、社会構成員としてのそれであるなら、アーシュラマはより個人の精神の成長に重点を置いていると考えられます。

  • 学生期(ブラフマチャリヤ) : 師から学問を学ぶ時期。古代インドにあってはヴェーダ。
  • 家住期(ガールハスティヤ) : 家庭をもち家長として子をもうけ俗世の成功を追及する時期
  • 林住期(ヴァーナプラスタ) ;俗世から離れ森林に隠棲して修行する時期
  • 遊行期(サンニヤーサ):一定の住所をもたず乞食遊行し、死を受容する時期

特徴的なのは、社会から離れて隠棲した後も死の受容までに二段階を経ていることですね。林住期の修行を積んで、最後の遊行期で精神的な自由を得ているというイメージかもしれません。

インドのシヴァ神像
※2024年9月 米国シカゴ美術館にて著者撮影

欲望や死を乗り越えるのがいかに難しいかを考えさせられます。

5、人生のステージと起業

神話から学び会社にしたこと

とはいえ、私はまだ家住期から抜けるのはずいぶん先だ感じます。ただ先にあげた気づきと同じく、もうすこし後進のために引き継ぐ、伝えるということを意識したいと思わされます。

ここまで書いたように、新たなステージで、より人に伝える、残す、次の世代のために貢献するということを意識したいと考えるようになりました。そのための器として会社化しました。

なぜ会社組織にしたのか、具体的にどうしたのか、などは今後またお話ししていきますが、開業の精神的支柱の一つに“自分の世界を確保したのちに、その世界を譲る”という神話的なステージを意識していることを、本日の結論としておこうと思います。

以下にメールアドレスを登録すると新規投稿をニュースレターで購読できます。(他の用途でメールが来ることはありません)

東條靖商店をもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む