小型法人で有価証券を持つということ

このコラムでは、小型の法人で有価証券を保有する際の注意点と私の気づきを簡単に記しておきます。なお私個人の経験・見解を共有するものであり、投資助言を目的とするものではありません。

小型法人における資本金や準備金

資本金や準備金の使い道

小型の法人を運営されている方は、法人設立の際の資本金や準備金をどうしていますか。

店舗や製造業の方だと設備投資に使うことが多いでしょう。従業員を抱える会社であれば運転資金に充てるので遊休資金になることは殆ど無いと思います。

しかし当社のような小規模サービス業で、かつ設備投資もほとんど無いと言う場合、意外と使い道がなく、法人の銀行口座に眠っていると言う方も多いのではないでしょうか。

一部を有価証券に投資する意味

もちろん安全資金ですので眠らせておくのも良いのですが、インフレ傾向が強い現在、ただ銀行口座に眠らせているだけでは、実質的に目減りしていくので勿体無いと思う方も多いと思います。

余剰資金の一部を有価証券へ投資することも考えてみては良いのではないでしょうか。私は事業への投資のほかに、ネット証券に法人口座を作り1年ほど有価証券での運用もしてみましたので、そこで思ったことを記録しておきます。

証券会社の法人口座について

法人口座を開設する

開設は簡単ですが、個人のようにオンライン審査で即口座開設できる、というわけにはいきませんでした。オンラインで資料請求したのちに書類が送られてきて、法人印での申し込み用紙への捺印・会社登記簿・印鑑証明のコピー送付が必要でした。

法人口座の特徴

開設終了し、ログイン画面を見てみると取引メニューはおおむね個人と変わらないものの、いくつか相違点がありました。

  • 取引手数料:開設当初は法人と個人で違い、手数料無料コースがあった個人に対して法人は有料のみでした。しかし2024年以降は法人も無料コースが選べるようになり、手数料の有利不利はなくなりました。
  • 買えない商品がある:株式の購入は問題ないのですが、たとえばマネーファンドや個人向け国債のように購入できない商品があります。特に元本保証の預金・債券は厳しいですね。
  • 個人向け国債が購入できないので、債券運用したい場合は必然的に社債または市場で取引される利付国債などが選択肢になります。ただし利付国債はネット証券では扱いがなかったので、大手証券での購入になります。
  • 利付国債は個人向け国債ほど流動性がなく、満期償還しない場合は既発債として債券市場での取引になるので、市場金利によっては購入時より安くなり損をする可能性があるのも難点ですね。
  • 当然ながら個人のための優遇税制度であるNISAやiDecoは使えません。

おおむね、ネット証券は個人に最適化されていて、法人は全般的にやや不利と言える状態でした。大手証券の大口取引で担当がつくなら有利さがあるのでしょうが、ただネット証券で安く利便性を求めるなら個人口座で投資した方がよいですね。

法人が保有するのに最適な証券を考える

個人と法人で目指す方向が違う

法人の余剰金運用という観点で見るなら、何に投資すべきか一番悩ましいところです。ここに書くのは銘柄推奨ではなく、あくまでも私の考え方です。

個人口座であれば長期的なキャピタルゲインを狙って、多少のリスクがあってもアップサイドの大きさを重視すべきだと個人的には思います。もちろん資産額や年齢に応じてリスク資産の配分は調整すべきですが、今後も世界の経済は成長し、有価証券は基本的には値上がりする、という前提に立てば、ある程度のリスクをとるほうが報われる可能性は高いと思います。

しかし法人では、資金の安定性がもっとも重要です。これは法人の本分が自社事業であり、いつ事業で投資をする機会が訪れるかわからないこと、その機会の際には大きく資金を投じることが、事業の成長につながるからです。

たとえばサービス業一人法人の方でも、こんな機会があるかもしれません。

  • 事業が拡大し、人を雇う必要が出た。そのためにオフィスも必要。
  • 広告宣伝や新たな機材などで、自社事業に多額の投資が必要。
  • 良さそうな事業への出資案件を知った。

このような時に換金しやすく資金化のハードルが低いのは、価格の安定性が高い株式か、債券といえます。

本末転倒にならない意識も必要

またあくまでも本業が優先ということを考えれば、株価の変動に一喜一憂する時間がもったいないのと、取引データの入力・仕訳処理の負担も増えるので、頻繁に売り買いするのは躊躇われます。

そうすると高配当の安定株や債券を長期保有するというのが、資本の有効活用に一つの最適解になるのでは無いかと思います。たとえば成長性が少ない分、割安で価格変動が少なく配当性向が高い銘柄。たとえば旧公社系や旧国有企業などはその選択肢に上がるかもしれません。

税制について

法人税制の特徴

あわせて法人所有での税制について考えます。

法人で取引する税制上のメリットは、損失を確定させた場合に法人の他の所得と通算損益できることです。

ただし、この制度は、短期売買を繰り返して損切りを頻繁にする場合、たとえば昔ながらの相場師やトレーダーの方は有効でしょうが、長期保有がメインで取引回数が少ないと、損失確定の機会も少ないのでいまいち使いきれないとも言えます。

通算損益について

また、毎年の決算の際に含み損益をつどその年の損益とあわせて計上する必要があります。これは個人には無い法人最大の特徴と言えます。

ボラティリティの大きい証券に投資して、あまり大きい含み益を計上する納税額が上がるリスクがあります。

逆に有価証券で損失を計上したことで、本業は順調なのに経常利益が少なくなり、経営状態が悪く見えることで、銀行の借り入れ交渉などで不利になるということもあるかもしれません。

税制から言えることとは

ここで大事なのは、証券に期待する役割は、大きく儲けることより、将来的に見通しのつきやすいことだと考えます。ここでも値動きが少なく配当で安定した収益の得られる銘柄の優位点が大きくなると言えるでしょう。

債券について

債券保有について

上記のように株式は、たとえ期待リターンがよくても、ボラティリティが最大のネックになりえます。それほど個別証券の検討や取引に時間を割くのが勿体無いと言う場合は、有価証券は債券に特化するのも賢明な判断だと言えます。

ただし現状発行されている社債を見ると、格付AAで1.6%程度、格付AA-で1.8%程度の利回りです(2025/10現在)。あくまでも収益を狙うと言うよりインフレによる資産の目減りを幾分か軽減できる程度の水準と思います。

また今後の金利が上がると、既発債券は含み損になります。このため途中売却すると損になります。満額が償還できる満期までの保有が基本になると思います。自分の会社にとって満期まで債券を持っておく余裕資金か、を慎重に検討する必要があります。

外国債券について

なお、米国債や米社債などの外国債券は、国内債券と比較した利回りが良く、個人投資家には人気が高い商品ですが、法人での保有には基本的には向かないと思っています。
これは、売値と買値のスプレッドが大きく、買ってからしばらくはかならず含み損を抱えるため、資金の置き場として考えた場合の流動性が著しく低いからです。

特に外国債に多い、ストリップス債券・ゼロクーポン債などの割引債(利息がつかない代わりに割り引いた価格で購入でき、満期に満額で償還される債券)の場合、最初はしばらく含み損を抱え、10年、20年と保有するうちに、後半ほど複利効果で急速に収益が積み重なっていきます。

このため個人の長期保有には有用な商品ですが、資金の流動性が大事な法人には適合性は低いでしょう。

終わりに

小型法人、一人法人で有価証券を持つ際はどうするべきか、いったんの私の結論としては、以下になります。

  1. 資本の本旨はあくまで本業の発展。投資は大きく収益を求めるものではなく、インフレヘッジや機会損失の回避が主目的と考える。
  2. 法人口座には個人投資家と比べて少し不利がある。
  3. 長期保有の場合、法人税制はそれほど有利に使えない。
  4. 法人が持つ証券はボラティリティより、安定性を重視。

ただし、まだ法人口座は1年ちょっとしか運用していないので、また状況が変わればアップデートしていこうと思います。

なお当社では、企業における資本構成や余剰資金の活用を含めた、資本政策のご検討をお手伝いいたします。ご興味のある方は下記のお問い合わせボタンをクリックし、フォームにご入力ください。折り返しこちらからご連絡させて頂きます。

※なお本記事は私観であり、なお私個人の経験・見解を共有するものであり、投資助言を目的ないことを改めて記しておきます。

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