法人で仮想通貨を持つべきかの考察

先のコラムに続き、特に中小企業の資本金・準備金などの余剰資金をどう有効活用するべきかを考えます。今回取り上げるのは仮想通貨への投資です。

仮想通貨の価格上昇がニュースになるたび、法人でも保有すべきか?と聞かれることが増えました。結論から言えば、多くの中小企業にとって仮想通貨の法人保有は合理的とはいえず、例外的な条件を満たす場合のみ選択肢になると考えています。

理由はシンプルで、法人の資本には増やす力よりもいつでも使える状態を保つ力(流動性)が求められるからです。

仮想通貨について

私は個人として7年前に仮想通貨取引所の口座を作り特にこの2年ほど少量をコンスタントに保有してきました。以下私が個人的に感じたことです。

一つ目はファンダメンタルの裏付けのなさによる、動きの読めなさです。経済指数との連動がなく需給バランスだけで決まるので、金融商品の値動に対するリスクヘッジになるのかと思いきや、マーケット全体が売られるときはマーケット以上に大きく売られるのと思います。

二つ目は持続的なバブル状態です。特にビットコインは恒常的にバブルだと言われながらもう10年以上経つのではないでしょうか。同様の商品はこれまでの経済史上なかったでしょう。

三つ目は、取引所に下値の制限がないことで、高値からの下落幅が異常に大きいことです。(最近だと2024/6から2024/9の3ヶ月で約−30%、2025/2から2025/5の3ヶ月に約-28%)法人で保有する観点でみた場合、特に法人の時価評価や決算などで影響が大きいことが推測できます。

これらの特性を踏まえ、法人としての保有が相応しいのか考えてみます。

仮想通貨と法人資本の相性は本来よくない

仮想通貨が持つ特徴は、個人投資としては魅力的でも、法人が扱う資本との相性を悪くします。先のコラムの繰り返しになりますが、私は法人資本のポイントはリターンよりも流動性だと思います。

これはいつ短期的に資金が必要になるかの見極めができず、その金額が大きいこと、判断を逃すと大きい機会損失が発生しうるからです。

このため金融商品に投資しながらも、チャンスが来た場合はすぐに事業のほうに投資し直せる流動性が重要と考えます。

この前提で考えた場合の以下法人資本と仮想通貨の適性です。

特徴法人とのミスマッチ
ボラティリティが極端に大きい決算がブレる/安値で資金化せざるを得ない局面が発生
一時的なドローダウンが深い設備投資・採用などの意思決定が遅れる
ファンダに乏しい・需給ドリブンリスク管理の前提が置けない

特に売るタイミングを逃してしまい、法人の運転資金がショートしてしまったり、安値で売らざるを得ない場合が出てくる不確実性が最大のリスクだと思います。

法人は本業は事業、運用は事業外ということを前提にすれば、保有証券に求めるものは価格の安定性を背景にした流動性であり、仮想通貨は価格変動から来る流動性の欠如が最大のネックになるので、持つなら法人ではなく、短期的なリターンを求められない個人口座、ということになると思います。

illustration of man getting downstairs, fear of the dark surreal concept

税制との関連性から

ここで特に仮想通貨で特に重要な税制のことも見ておきます。個人としてわかりやすいよう整理してみました。


(注意)以下の税制に関する情報は、2025年10月時点の一般的な日本の税務ルールに基づく個人的なまとめであり、個々の状況によって適用が異なる場合があります。仮想通貨の税務処理は複雑で、法人の規模や取引内容により異なるため、実際の運用や申告にあたっては、必ず税理士や会計士などの専門家にご相談ください。本記事は税務アドバイスを目的とするものではありません。

比較個人法人
課税雑所得(総合課税)法人税
税率最大55%約25〜30%前後
損益通算不可可能
評価利確時のみ課税保有目的※により期末評価の可能性

※法人の仮想通貨保有については、会計上の保有目的によって処理が異なります。売買を目的とする場合は期末に時価評価を行い含み損益を損益に計上しますが、
長期保有を目的とする場合は取得原価で評価し、売却や交換など利益確定時に課税されます。

数字だけ見れば法人の方が得に見えます。

しかし中小企業の場合、ここが落とし穴です。

  • 利益が年間400万円を下回るなら、税率優位は限定的
  • 利益が出過ぎると、本業利益とのバランスが崩れる
  •  そもそも法人資金はドローダウンを許容できない

税制上の有利さは“条件付きの部分最適”であり、法人保有を正当化する決定打にはなりません。

仮想通貨保有会社の株式を持つこと

ところで今年仮想通貨関連で話題になったのは、仮想通貨を買ってホールドだけをする法人の株価高騰と急落だとおもいます。これらの会社は事業をほとんどせず、会社の収益源を仮想通貨の値上がりに頼っています。

ただしこれらの会社には存在意義があります。それは仮想通貨の代わりにこれらの会社の株式を持つことで、代替的な仮想通貨投資ができるということです。

これは税制上の有利さを含みます。仮想通貨を売却すると雑所得として上記の税制にように高率の税金がかかる可能性があるのに対して、株式であれば20.315%と税率が固定のため、特に大口の取引だと有利になる可能性が高くなることです。

ただし考慮すべき点もあります。

1つはあくまでも会社の株式であり、純粋な持分の仮想通貨の価格ではないことです。事業内容も価格に織り込まれます。このため、この業種の期待が高まった今年前半は株価が高騰し、割高と判断されてからは急速に価格が下落。仮想通貨とは違う小さいバブルと崩壊を起こしました。

2つめは、アメリカのように仮想通貨のETFが今後導入された場合、純粋に仮想通貨との連動性では、ETFに分があると思われることです。

最後に、中小企業の資本運用としてこれらの会社の株式への適正を考えてみます。

  • ボラティリティ:大きい。ダウンサイドが大きい可能性もあります。
  • 価格:2025/10の段階では仮想通貨に直接投資するより概ね割高傾向。PBR(株価純資産倍率)が1.0倍を超えて、ただ保有するだけの会社に保有資産以上の値段がついていることになります。
    (2025/10/27時点でのPBR:メタプラネット1.59倍、堀田丸正14.75倍)
    ビットコインを持つだけの会社については以下記事参照https://gendai.media/articles/-/157045
  • 税制:法人が直接仮想通貨を売却した場合25〜30%前後の税率が、これらの会社の株式で利益確定すると20.315%の税率で済むのは最大のメリットです。

総じて言えることは、株価が適正だと思うのならこれらの会社を活用するのも検討の余地があると思います。ただし税制上の優位点は、個人で多額の取引をする際にもっとも強く、法人だとそれほど目立たないといえます。

まとめ

法人で仮想通貨を持つべきか。

これは最終的には、自社が何を目指すのかの哲学によるのですが、資本の最大化を目指すなら仮想通貨への一部投資もありだと思っています。特に資金規模が大きいほど有利です。リスクを取れること、また利益確定額が大きいほど税制上有利だからです。

資金規模が小さい場合は無理に保有せず、法人はあくまで価格変動が穏やかで流動性の高い有価証券を買い、個人として仮想通貨を保有した方が良いと思います。これは以下の理由です。

  • 法人はあくまでも本業が優先であること
  • 運用する余力が小さいこと、その場合に税制上のメリットが活かせないこと
  • 資金不足になると望まぬタイミングで売却するリスクが大きいからです。

私は後者の方なので、現状では法人での仮想通貨投資はするつもりがないことを記しておきます。前回のコラムと同じく、価格変動が比較的小さい有価証券を長く持つ、というのが特に事業をする法人にとっては賢明な方法であると考えています。

なお当社では、企業における資本構成や余剰資金の活用を含めた、資本政策のご検討をお手伝いいたします。ご興味のある方は下記のお問い合わせボタンをクリックし、フォームにご入力ください。折り返しこちらからご連絡させて頂きます。

※本記事は私観で個人の経験・見解を共有するものであり、投資助言を目的ないことを改めて記しておきます。
※税制に関しては、最終的に税理士や税務署に確認いただくようお願いします。

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