このコラムでは、最近読んだ“左利きのエレン”という漫画を読んで感じた、人間の才能がどうやって言語化され価値になるか、の視点をご紹介します。
左利きのエレンとは
『左利きのエレン』(原作:かっぴー氏)は、広告業界を舞台に天才と凡人の苦悩を描いた作品です。2019年にはNetflixでドラマ化もされました。

※画像は Amazon.co.jp 商品ページ(左利きのエレン1https://amzn.asia/d/6UcNM0V)より引用。
話の内容はここでは紹介しませんが、話の随所で作者による人間の才能論が紹介されます。これが非常に面白いので、ここでご紹介しながら、人間の成長や人材教育にどう役立てられるのかを考察したいと思います。
作中では才能を大きく3つの観点で考察しています。
才能を決める3つの軸
1、才能は集中力のステータスで決まる。
これは作中で人物の個性が決まる主要な軸の一つです。
才能とは何より、創作や思考などに集中できる能力の事とされます。集中には三つの側面があり
- 早さ:集中に入れるまでの瞬発力
- 深さ:集中力の強度
- 長さ:集中力の継続時間
これらの組み合わせがその人の才能の個性を作るとされます。

主人公の朝倉は深く長く集中するが切り替えが遅いシングルタスク型、同僚は瞬発型のマルチタスク型です。集中の質にも個性があります。
この集中力にも個人で違いがある、という考え方。一口に集中が大事、という考えにとどまらず、自分の得意な集中のパターンを見つけることが大事、という点が非常に面白いと思いませんか。
2、才能の発揮には制約がある
才能はすぐに発揮できるものではなく、発揮するためには特別のパターンの行動(ルーチン)が必要とされます。1に記載したように、才能を発揮するためには深い集中に入る必要があるからです。そして大きい才能を発揮する際ほど、複雑なルーチンが必要とされます。

たとえば登場人物によって以下のような行動がルーチンとして紹介されます。簡単なものだと、コーヒーを飲む、音楽を聴くなどから。
- パーカーのフードをかぶって外部の音や光を遮断する。
- 大事な本番の前は仮眠を取る
極端なものだと
- 大勢の前で自己愛的な発言を大声でして、自分を自信づける。
というように厄介なものまであります。
厄介なのは、そのルーチンを本人が気づいていないことが多いという事です。
外部の人が観察してわかっているのに、本人のみが無意識で実施していて、いざというときに気づかないということがあります。作中では自分自身のルーチンの発見が大きいテーマになっている話もあります。

これは、能力の発揮には相応の代償が伴うというのは非常に漫画的な表現でありながら、現実にも活かせる視点です。自分の得意なパターンをみつけて勝負するというのは、まさに己を知る視点といえます。
3、作中に出てくる特異な才能
集中を必要とする才能以外に、作中では凡人では理解できない特異な才能をもつ人物がたまに出てきます。ただスペックが高い人物というよりは、直観力で、理屈では説明しきれない才能を発揮します。これは天才というものでしょう。
その能力は人物本人が認識していることが多く、しばしば本人がネームを呼称します。

作中には、才能を可視化した“異才”の例も登場します。
ファッション業界の岸家は、母が「瞬時の判断力」、娘たちが「超解像度ペルソナ」「没入力」など、それぞれ独自の才能を持ちます。
主人公エレンは「絶対視覚」を持つが、その鋭敏さゆえに苦悩します。
こうした命名は、才能を言語化する力そのものを象徴しています。
これらがただの漫画表現にとどまらず興味深い点が、言葉の力を生かすということだと思います。具体的には自分が恵まれている才能に名前をつける自分で認識しておくことで
- 自分で認識することで、相手との交渉で有利に立てる。
- アンカリング・ラベリングの効果で自分自身が優秀であると思い込める。
というメリットがあると考えられます。己を知ることの大事さと、言語化することの大事さを考えるシーンです。
現実世界に生きる学び
ここまでご紹介した左利きのエレンの才能論について考えます。必ずしも全てに科学的根拠があるものではないかもしれませんが、経験値を言語化した論として非常に面白いのではないでしょうか。
これらから私が特に重要と感じた事は、若いうちから自分の適性をよく知っておく重要性です。多様な働き方が広がる今こそ、自分のタイプを早く知ることで、才能を活かす可能性が大きくなると考えます。
同時に、自分はこういう人間であるとキャラ化することでの自己暗示の効果も大きいことでしょう。

そのため、本書から得たヒントとしては、以下の3点を意識するのが良いと思いました。
- 自分の集中の質を知り、それに合わせた対策をたてる
- 自分がどうやったら集中に入れるかを意識しておく
- 自分に突出した才能があれば言語化し、意識的に武器に使う。

今回は一旦ここまでとし、次回のコラムでは実践編として、具体的にこれらをどうやって見つけていけば良いのか、私の体験から、一つのヒントを提示したいと思います。

